その焦りは、本当にあなたのものですか

そろそろ結婚しなければ。

そう思うとき、その気持ちはどこから来ているでしょうか。

自分の願いだと思っていたものが、よく見ると人からもらったものだった。

そういうことが、あります。

私は10年間、結婚相談所を営んでいました。

その現場でも、自分の家のことでも、それを何度も見てきました。

母が遺した、ひとつの言葉

私の母は、家の決まりに従って生きた人でした。

昭和の田舎ですから、そういうものだったのだと思います。

母が亡くなってから、知ったことがあります。

母にも、好きな人がいたそうです。

けれど、その人との結婚はかないませんでした。

遠くの人だったから、という理由でした。

それを知って、思い当たることがありました。

姉が遠方の人と結婚すると言ったとき、母はひどく怒ったのです。

私は、こう言いました。

好きになった人同士が結婚するのだから、いいじゃないか。

母は、一言だけ返しました。

「あんたにわからへん」

あのときは、意味が分かりませんでした。

いまは、少し分かる気がします。

母は、自分ができなかったことを、娘にさせるのが怖かったのかもしれない。

あるいは、うらやましかったのかもしれない。

どちらにしても、母のなかにあった痛みが、姉に向かって出てきたのだと思います。

私はここで、母を責めたいのではありません。

母もまた、そういう時代を生きた一人でした。

ただ、こう思うのです。

人が誰かに向ける言葉には、その人自身の人生が混ざっている。

親御さんの焦りが、あなたの焦りになっていることがあります

現場でも、似たことがありました。

大学を出たばかりで入会された女性がいました。

親御さんに勧められて来られたのです。

まだ早いのではないか、と私は思いました。

ご本人にも、急いでいる様子はありませんでした。

活動を進めるうちに、お相手が見つかり、話は進んでいきました。

あとで分かったのですが、お母さまには考えがあったようです。

家に来てくれる方を、と望んでおられたのです。

まずは結婚して、なじんできたころにその話を持ちかける。

そういう見通しだったのでしょう。

娘さんを思ってのことだったと思います。

家を残したいという気持ちも、その世代にはよくあることでした。

ただ、そこには娘さんの願いが、まだ入っていませんでした。

こういう場面は、めずらしくありません。

「そろそろ孫の顔が見たい」

「みんな結婚しているのに、あんたはどうするの」

こうした言葉は、悪意から出ているわけではないのです。

心配しているのです。

けれど、心配は焦りとして伝わります。

そして受け取った側は、それを自分の願いだと思い込みます。

分けてみるだけで、少し軽くなります

ここで、ひとつやってみてほしいことがあります。

紙を一枚、用意してください。

そして、こう書き出します。

私が結婚したいと思う理由。

思いつくまま、10個ほど並べてみてください。

書けたら、それぞれの横に、誰の声かを書いてみます。

親。

友人。

会社。

世間。

自分。

それだけです。

判定はしません。

親の声が多くても、悪いことではありません。

親を思う気持ちは、あなたの大切な一部です。

ただ、混ざったままだと苦しいのです。

自分の願いではないものを、自分の力で運んでいることになりますから。

分けて眺めるだけで、荷物が少し軽くなることがあります。

焦りをなくす必要はありません

焦りを消そうとしなくていいと、私は思っています。

焦りは、大事にしたいものがあるから出てくるものです。

子どもを持ちたいという願いも、家族を作りたいという願いも、あなたのものであれば、それは尊いものです。

問題は、焦りがあることではなく、焦りの出どころが分からないままでいることです。

出どころが分かれば、扱えます。

これは母の願い。

これは私の願い。

そう分けられるようになると、人の言葉に振り回されにくくなります。

そして不思議なもので、そのころには表情が変わっていることが多いのです。

現場でも、それはよく見ました。

急がなくて大丈夫です。

あなたの人生を決められるのは、あなただけなのですから。

自分の願いと、人からもらった願いを分けるところから始めたい方へ。

『正解の結婚より、納得できる人生』

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