年収を理由にしなかった女性の話

婚活で、年収の話は避けて通れません。

生活がかかっていますから、当然のことです。

私が結婚相談所を営んでいたころも、登録のときにはきちんと希望を決めていただいていました。

今日はその話をしたいのですが、条件を気にするなという話ではありません。

むしろ逆のことを書きます。

これから書くのは、実際にあった話です。

個人が分からないように、年齢や経緯は変えてあります。

数字だけ見れば、合わない相手でした

Bさんは、30代の女性でした。

登録のときには、お相手の希望条件をきちんと決めておられました。

年収の目安も、そのひとつでした。

ところが彼女は、その希望とは離れた年収の男性を、お見合いの相手として見ていたのです。

私たちから見れば、不思議な選択でした。

数字だけを並べれば、合わないと判断できる相手だったからです。

けれど、彼女はお見合いを希望されました。

そして実際に、お見合いが成立しました。

そのあとの展開は、早いものでした。

二人の気持ちは、すぐに固まっていきました。

真剣交際を経て、成婚退会となり、その後結ばれました。

成婚退会の日に、聞いてみたこと

退会のとき、私は率直にたずねてみました。

条件の差、特に希望していた年収との差はどうだったのですか、と。

彼女は静かに答えてくれました。

確かに、最初は気になった。

でも自分には仕事があり、生活の見通しにも自信があった。

それよりも、彼と会っていると、なんだか安心できた。

そう言われました。

私は、もうひとつ聞きました。

希望条件に合わない相手と、なぜお見合いしたいと思ったのですか。

すると彼女は、少し困ったように笑って、こう言ったのです。

「そういえば、自分でもよく覚えていないんです」

覚えていない。

これは、なかなか味わい深い答えだと私は思っています。

理屈で選んだのなら、理由は言えるはずです。

言えないということは、頭ではないところが動いていたということでしょう。

いつ結婚しようと決めたのか、とも聞きました。

初めて会ったときに「この人」だと感じた、との返事でした。

条件を捨てたわけではありません

この話をすると、こう言われることがあります。

つまり、条件を捨てればいいんですね、と。

私は、そうではないと思っています。

Bさんは、条件を捨てたわけではありません。

条件よりも大切なものがあることに、気づいた。

ただ、それだけです。

ここは、間違えると危ないところです。

条件を下げれば決まる、という話ではありません。

無理に妥協した結婚が、あとでどうなるかは、想像がつくと思います。

Bさんの場合、下げたのではなく、順番が変わったのです。

年収という条件の、奥にあるもの

そもそも、なぜ私たちは年収を条件に入れるのでしょうか。

数字そのものが欲しいわけではないはずです。

その奥にあるのは、たいていこういうものです。

生活が立ちゆかなくなったら困る。

将来、不安な思いをしたくない。

大事にされたい。

つまり、安心が欲しいのです。

年収は、安心を測るための、分かりやすい目盛りとして使われている。

私は、そう見ています。

Bさんの場合、その安心を別のところで感じられました。

自分に仕事があり、生活の見通しが立っていた。

そして、彼と会っていると落ち着いた。

安心が満たされたので、目盛りのほうは重要でなくなった。

そういうことだったのだと思います。

自分の条件を、一度ほどいてみる

だから、条件を消す必要はありません。

かわりに、こう問い直してみてください。

この条件で、私は何を守ろうとしているのだろう。

年収の奥にあるものは、人によって違います。

生活の安定という方もいれば、対等でいたいという方もいる。

親を安心させたいという方も、実際におられました。

奥にあるものが分かると、道が一本ではなくなります。

その条件でしか手に入らないと思っていたものが、別の形でも手に入るかもしれない。

Bさんに起きたのは、そういうことだったのだと、私は思っています。

条件は、あなたを守るためのものです。

あなたを縛るためのものではありません。

条件の奥にあるものを、一冊かけて書きました。

『正解の結婚より、納得できる人生』

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